将棋の戦法「四間飛車」の攻め筋で、vs居飛車穴熊の特効薬である「藤井システム」の手筋、定跡を説明します。
NHK将棋フォーカスでの村山プロの講義に沿っていますので、初心者の方はもちろん、基礎から復習したい方も必見の内容となっています!
本記事では、藤井システムで攻められた時の、居飛車穴熊側の対応も説明してます。「わしゃ居飛車一筋じゃい!」という居飛車党の方も藤井システム対策を勉強してください!
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では参りましょう!
藤井システムとは
簡単に、藤井猛九段が開発した「穴熊を組ませない!」がテーマの対居飛車穴熊の戦法です。
4筋に飛車を振ってから戦う四間飛車の一種です。
しかし「藤井システム」って名前かっこいいですよね。あらゆる「○○システム」の中でも上位レベルだと思います。
「藤井」という苗字自体はそんなにかっこよくないです。苗字単体なら薬師寺や二階堂に敵いません。でもシステムを後につけると話は変わってきます。おそらく「システム」という単語自体が派手で目立つからでしょう。
確かに「薬師寺システム」だとちょっとクドいです。「藤井システム」から漂う絶妙なバランス感覚はなんなのでしょうね。ファッションでいうところの「上が派手なら下はシンプルに」が「○○システム」にも適用されるのでしょう。
あなたも自分の苗字に「システム」をつけていい感じになるようなら、是非新しい将棋の戦法を編み出して歴史に名を刻みましょう!
ということで、手筋を紹介します。
後手番 藤井システムの手筋
本記事では、後手番の時に使える藤井システムの手筋を紹介します。
なのでこれ以降、盤面上側が藤井システムです。
少し見にくいですが、攻められてる側の気持ちになって見ることで、威力を実感しましょう。
序盤は普通の居飛車vs四間飛車の定跡通りの展開で進めます。以降青字が後手の藤井システムです。
7六歩→3四歩→2六歩→4四歩→4八銀→4二飛→6八玉
この局面はたくさん見たことがあるでしょう。通常の四間飛車ならば、王様を囲っていきます。
しかし藤井システムの特徴的な一手、9四歩です。
このタイムングで端歩を突くのですね〜
居飛車側が端歩を受けたら急戦調になりますが、今回は穴熊囲いで戦う場合なので歩は突きません。
ここからの自然な展開は
7八玉→7二銀→5六歩→5二金
で、こうなります。
この局面、藤井システムの特徴がはっきりと出ています。
王様の囲いは美濃囲いっぽいのですが、居玉のままですね。
将棋の格言に「居玉は避けよ」と「玉飛接近すべからず」がありますが、両方に反しています。
格言のデメリットを度外視したメリットが藤井システムにはあるのです。めっちゃクールですね〜
ということで、藤井システム側は意地でも玉は動かさず、駒組を進めていきます。
2五歩→3三角→5八金→6四歩→5七銀→3二銀
そうするとこんな感じになります。
この後、居飛車側は3六歩と突いて急線にする展開も多いです。
ただ今回は居飛車穴熊に持ってく流れを取り上げて、藤井システムの優秀さを見てもらいます。
ということで7七角です。穴熊を目指す一手です。
それに対して7四歩→8八玉→7三桂と進みます。
桂馬を使っていくのも特徴です。
藤井システムは角と桂馬が攻めの主役です。
居飛車側は、桂馬を飛ばれたらいけないので
6六歩と突きます。
これには4五歩が気持ちのいい一手ですね。
相手が角道をふさいだ瞬間に、こちらが開けて主導権を握る。さらに4筋に飛車の道も見えてきます。
さて、穴熊を作るためには9八香です。この香車をあげる一手は自然に見えますが、実は悪手です。
藤井システムの格好の餌食になってしまいます。
では香車をあげたらどうなるか見ていきましょう。
9八香には、9五歩と突きます。これは近い将来に端攻めをする布石の一手です。
居飛車側はいそいそと9九玉と穴に逃げ込みます。
この瞬間を逃しません。
穴熊囲いは9九に玉が入った瞬間一番危険です。
ここから、藤井システムの攻めが炸裂します。
仕掛けの始まりは、6五歩です。同歩ときたら、3三角です。これには同桂馬ですね。
どんどん穴熊としては嫌な形になっています。
そしてここからは、弱点の桂馬の頭から攻めます。
7五歩、同歩ときて「もう一歩あれば…」となりますね。あぁ桂馬の頭に歩を打ちたい…!
どこからその歩を手に入れようか…?
ここです。
9筋の端歩を突きます。
9五歩はこの瞬間を見据ていたんのです。将来の端攻めのために蒔いた種が、今実りました。
同歩、同香車、同香です。香車はもう捨ててしまいます。その代わり、喉から手が出るほど欲しかった歩をGETしました。
早速、7六歩打ちです。
もう居飛車はしんどいですね。
これが藤井システムでの最高パターンです。
居飛車側はなんとかしようと8八銀としても、7七歩成り、同銀とすると6五桂がめっちゃ痛いです。
完全に藤井システムが優勢です。
居玉が効いているのがわかりますね。いつもの美濃囲いなら、王が8二の端の方にいたら歩をとるために端を捨てたせいで、香車が怖い展開になります。こっちが攻めてるけど、逆襲されかねません。
しかし、王様は真ん中で安全を確保しています。格言を無視したけれど、最高の形になっています。
これが革命的戦法と言われた、藤井システムです。
ということで、居飛車は藤井システムで攻められた時には一直線で穴熊を組んではいけないのですね。
では居飛車側はどうすべきか、見ていきましょう。
居飛車穴熊の藤井システム対策
ここから、先手の居飛車穴熊の立場で説明します。
一旦、この局面に戻りましょう。
後手が4五歩と突いたシーンです。
ここで居飛車側は香車をあげると危険になってしまいました。なので、先にもう少し守りを固めることにしましょう。6七金です。
そして後手が9五歩と突いてきたら、7八金と守りをさらに固めましょう。
居飛車穴熊を指す上で大切なのは、攻めてきそうだな〜と思ったら、まず金銀で守りを固めることです。穴熊はその後でも、全く遅くありません。
もしここから後手に攻められるとどうなるか、見てみましょう。
6五歩から攻めるパターン
先程と同様に攻めてこられるとします。
6五歩→同歩→3三角成り→同桂馬
金がいるのでうまくいかないですね。失敗です。
先に桂馬を跳ねるパターン
6五に歩を突く前に、まず8五に桂馬を跳ねて攻められたらどうなるか?
6八に角を引いて逃げます。
で、6五歩と突いてきます。
この攻め、ちょっと怖いですよね。角のラインで攻められそうです。
しかし居飛車には良い手があります。5五歩です。
え?これ?と思うくらい、軽い一手ですよね。
後手が5五角と歩を攻めてきたら、同歩とせずに、8六歩と桂頭を攻めます。
6六歩とさらに攻め込んできたら、同銀とします。
この銀がちょうど角に当たっていますね。
うまく角を追い払うことができました。
ということで、この手筋も悪い攻めではないのですが、少し無理筋な気配です。
居飛車は先に守りを固めておいてよかったですね〜
羽生さんによる藤井システムの進化
しかし藤井システムは、先に守りを固められたくらいで挫けるほどヤワではありません。
居飛車が金をあげて守りを固めた局面に戻ります。(再び、後手藤井システムの立場で説明します。)
ここで、あの羽生善治さんが藤井システムを進化させる新手を打ち出しました。
それが、6三銀です。
美濃囲いに使っていた銀を、攻めに使う一手です。
この手の何がすごいのか、見ていきましょう。
先手は金で守りを固めたので、やっとこさ穴熊を作れると、9八香と上がります。
このタイミング(銀をあげて、香車も上がった時)で満を辞して、桂跳ねからの攻めを仕掛けます。
先程と同じ流れで8五桂→6八角→6五歩→5五歩です。
5五角ではダメでした。しかし今回は違います。
6四銀です。
ここでの攻防に銀を絡めることができるのです!
6五歩としてきたら、5五銀です。
どんどん銀を進めることができました。
この状況、居飛車はしんどいですね。角のラインに合わせて銀で攻め込まれていますから。
と、いうことで、後手が8五桂と跳ねた時には、
居飛車は8六角と上がるのが正しい応手です。
桂馬に歩を突けないので安定させてしまいますが、6四歩→5五歩となった後、6四銀と上がってくる手を防ぐことができます。
ここから先は、プロの世界です。主導権を握っている分、後手藤井システムの方少し優勢です。
以上を踏まえて、居飛車党の方は、藤井システムで攻められた時は無理して穴熊にするのではなく、急戦調で戦うのがベターとされています!
藤井システム 定跡まとめ
手筋を知らないと一瞬で決着が着いてしまう気の抜けない攻防でしたね。
もうあなたは今すぐにでも、藤井システムで戦いたくてうずうずしていることでしょう。
是非この記事で藤井システムの手筋を覚えて、居飛車穴熊を倒しまくってください!
ちなみに、居飛車穴熊そのもの強さは、この記事を読んで頂ければわかると思います。
また終盤の細かい展開が苦手って方は速度計算や絶対に詰まない形を覚えることをオススメします。
終盤力が劇的に成長しますよ!
それでは
カルボン酸太郎でした。
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