バスケしてないし、登場した時間もわずかなのに、鉄男ってなんでこんなに人気なんだろう。
名言「モップはてめぇが…」を持っているとはいえ、物語の本筋には直接関係していない。
だからきっと、読者の印象に残る深い理由があるはずだ。
鉄男のキャラクター像として以下が挙げられる。
・自分の興味のままに動く、我が道をゆく
・口数が少ない、ドライ
・ぶっきらぼう
多くがグレてから不良になった後天的ヤンキーなのに対し、鉄男は先天的な生粋の不良のようだ。
キャラデザもしっかりしてる。スラムダンクがヤンキー路線で進んだ場合、確実に主要キャラになっていただろう。
そんな隠れファンの多い鉄男。その人気の理由を、私はついにつきとめた。
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常人離れした体幹
体育館での鉄男VS花道のワンシーン
鉄男は花道に蹴りを入れるも、一旦は止められる。
しかし花道は頭から垂れる血に気を取られ、せっかく捕えた足を離してしまう。
その隙を鉄男が見逃すはずがない。
足を下ろす間も無く再びキック。
花道のみぞおちに大ダメージだ。
ここで特筆すべきは鉄男のボディバランスの良さだろう。
一発目の蹴りの高さ
片足立ちでも軸の通った姿勢
そのまま強く蹴れるパワー
体幹がきちんとしていなければ成し得ない大技だ。誰もそんなとこ見てやしねーだろうが…
並みじゃできない。
この一連のシーンで読者はすでに鉄男の虜になっている。
鉄男はいいやつなのか
鉄男ファンの99.9%は類まれな体幹の強さに惹かれている。
しかしどこにでも変わり者はいる。残りの0.1%が好きであろう鉄男の特徴が
「寡黙でドライな性格なのに含みのある言いまわしをする色気」
である。
僕には全然わからないんですけどね…
まあしょうがないので解説します。
翔陽戦直前、病院帰りの三井と偶然遭遇した鉄男
その風貌の変化は、はじめは三井だと気づかなかった程だ。
湘北の体育館に襲撃してから数週間
それまでずっとつるんでたのに、パタッと関係を絶ったことになる。
ここでバッタリ会わなければ、三井がバスケ部に戻ったあの日から、もう鉄男に会うことはなかったはずだ。
でも偶然出会ってしまった。若干の気まずさもある。
そんな複雑な再会での、鉄男の最初の一言は
「なんだその頭は スポーツマンみてーだな」
ぎこちなさは全くない。それもそのはず。それまで当たり前のように一緒にいたのだから。
「ま… そっちの方が似合ってるよ おめーには」
鉄男の振る舞いには装飾がない、嘘もない。だから三井に対する言葉にも重みがある。
スポーツマンになってからの三井と会うのはじめてだ。でも直感的にそれが三井の本質だと気づく。
もしかしたらずっとそう思っていたのだろうか。
一緒にいながらも、同じ世界に住む人間ではないと感じていたかもしれない。
鉄男は三井の様に、グレて不良になった訳ではないのだ。
ただアウトローだっただけの、本物だ。
「じゃな スポーツマン」
たった9文字から、どれだけの意味を汲み取れるか。
「じゃな」
砕けた言いまわしだが、一生の別れを表す。住む世界が変わったのだから、もう交わることはない。
積もる話だってあるだろう。しかし多くは語らない。
この一言に全てが集約されているからだ。
嫌味ではなく「スポーツマンとして頑張れよ」というエールが込められている。
一見するとあっけない、ドライにも見える。
普通なら一緒につるんでいた仲間が「やっぱ真面目にやる!」なんて言ったら嫌いになるだろう。
別れの言葉すらない。報復されたっておかしくない。
でも鉄男は違う。飄々としている。
鉄男は依存しない。
三井がグレたタイミングに、たまたま時を共に過ごしていただけだ。だから終わりもあっけない。
鉄男は三井のことが友人として好きだったのだろう。だから素直に門出を祝える。
三井との日々に執着しない。
儚さもあるが、それが鉄男だ。
つかず離れずのこの関係性が、見ていて心地良いのだ。
警察に追われていて時間がない。そんな限られた状況で、洗練された言葉選びとニュアンスの妙で全てを伝えた。
鉄男の色気、魅力が凝縮された名シーンである。
鉄男と三井の関係性
不良時代の三井を支えていたのは、鉄男だったのだろう。
バスケのことを忘れられない三井に振られた今の彼女が、鉄男だ。
鉄男もそのことにはずっと気づいていた。
…まるで恋愛漫画だ
もう一緒に過ごすことはないけれど、近くでずっと三井クンのことを見てきたからわかる
三井クンにはバスケの方が似合ってるよ!
(本当は寂しいけれど、三井クンに幸せになって欲しいから、黙って送り出す鉄男)
…なんて淡く切ないのだろう。
スラムダンクは恋愛的なメッセージも兼ね備えた、守備範囲の広い漫画なのかもしれない。
それでは
カルボン酸太郎でした
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