漫画「SLAMDUNK」で根強い人気を誇るミッチーこと三井寿。過去には色々と問題があったが、湘北高校に欠かせない存在であることに疑いはない。
三井には名言や名シーンが多いことで有名だ。本人のカリスマ性ゆえか、三井と関わるキャラクター達も魅力的だ。
そんな三井の名シーンは、もはやスラムダンクを読んだことがない人でも知っているだろう。
本記事では数ある名シーンから、スラムダンクファンなら知ってて当然の「あの」名シーンを掘り下げる。
わざわざ取り上げるシーンか?と思うかもしれないが、じっくり読むことで新たに気づくこともある。
では早速、該当シーンを紹介する。
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今の君はもう十分あの頃を超えているよ
ここだ。
山王戦開始早々に訪れる、安西先生が三井に語りかける屈指の名シーンだ。
「安西先生… バスケがしたいです…!!」
「静かにしろい この音が……オレを甦らせる。何度でもよ」
「おう オレは三井。あきらめの悪い男…」
このあたりを期待していた方、申し訳ない。
誤解を招く表現があったこと、お詫び申し上げる。
けれど僕からしたら三井寿の名シーンといえば、圧倒的にここなのだ。
詳しく見ていこう。
それは山王戦開始早々に訪れた
山王戦が開始直後、湘北は宮城&桜木によるアリウープで衝撃の先制点をあげるも、山王キャプテン深津に難なく2点を返される。この時放たれた「同じ2点たピョン」は深津の名言の一つだ。
しかしその後は三井が魅せる。なんと3連続スリーポイント。王者山王相手に離れ業を見せ「この三井寿という選手は何者だ!?」と会場を騒然とさせる。
ここからが一連の名シーンなのだが、最初は安田の何気ない一言から始まる。
安田「中学でMVPをとった頃は今よりすごかったんですか?だとしたらものすごい中学生だ…!!」
木暮「いや…そう思っているのは多分本人だけだよ 後悔の念が強い分あいつは過去を美化し今の自分を責める傾向がある…」
まずは木暮が、今の三井を肯定する発言をする。聞こえていたのか、安西先生が続ける。
安西「三井くんは…自分の重要性をいまひとつ信じ切れないでいた…いや復帰当初は信じていたかもしれないが…ブランクの重さを実感するたびに自分を信じられなくなっていったんじゃないかな…」
「…だがそろそろ自分を信じていい頃だ…」
『今の君はもう十分あの頃を超えているよ』
なぜここが三井の名シーンなのか
読んでいて直感的に感動するので正直理屈などいらないが、この場面がより名シーンだと感じられるように、解剖をはじめる。
この一連の流れが名シーンたる所以は、3つの観点から説明できる。
山王戦のまだ序盤である
山王戦では三井は後半にも大活躍をする。作中で三井が一番活躍したと言える。そのため名言と名シーンが大量発生する。
ただそれは試合展開も相まっている。怒涛の追い上げというストーリーが、私たちを熱くさせる一因だ。
このシーンは開始早々で、まだ落ち着いた精神状態だ。だからこそ、勢いでの誤魔化しが一切ない。
なんというか「お腹空いている時に食べるご飯が美味しい」と構図が似ている。もちろん本当に美味しい食べ物なのだろうが、空腹というファクターが与える影響が大きすぎて、食べ物単独での評価が難しい。
けれど本当に美味しい食べ物は、空腹で修飾しなくたって、美味しいのだ。
アインシュタインの稲田は、あの顔じゃなくても面白いのだ。そういう意味では、実力がある稲田にとって、顔の個性はもはや邪魔なのかもしれない。
本人の耳には届いてない
このリアルさが良い。
もし直接言葉で伝えたとしたら、少しお涙頂戴なニュアンスが出るだろう。
本人が試合をしている中、ベンチで第三者同士で語り合うからこそ真実なのであり、リアルだ。
実際に三井と安西先生は言葉を交わさない。
ガッツポーズだけで語り合う。
男と男の想いの通じ合い方であり、選手と監督の距離感だ。決して抱き合ったりしない。
過去に後ろめたさ、ばつの悪い苦い経験をもつ人ならわかるだろう。
心を入れ替えて頑張ってきた努力が、肯定される瞬間だ。
スリーポイントの描写でない
そしてこの3つ目が、一番重要なポイントだ。
安西先生が感動的なメッセージを残す瞬間の描写がスリーポイントシュートではなくゴリへのアシストであることだ。
このシーン三井をマークするのは一之倉。
スッポンディフェンスの代名詞をもつ一之倉は、フェイスガード(オフェンスにぴったりと距離を詰めるデフェンス)で三井を封じる。
これは翔陽の長谷川よりも厳しいディフェンスだ。
この間合いで守られたら流石にスリーポイントシュートは難しい。だがその分ドリブルで抜きやすくなる。
三井は無理にスリーは打たず、冷静に1on1で抜いた。河田のヘルプを交わしゴリへアシスト。
実にクレーバーなプレイだ。このバスケIQの高さ、地力があることを象徴するプレーがバックグラウンドで流れていることで、安西先生の言葉の重みがグンと増す。
君はもう中学時代上手かった選手じゃない。
山王工業にも通用する立派なプレイヤーに成長しているよ。
三井が自分にかけていた呪縛を、自分のプレーによって解く。その瞬間を描写した紛れもない名シーンだった。
三井の名シーンまとめ
普通なら、三井の名シーンを描こうと思った時、誰だってスリーポイントのシーンを選ぶだろう。
だが井上雄彦先生は違う。そもそも人工的に名場面を作ろうとしていない。考え方が真逆なのだ。
物語、試合展開に応じてしかるべきシーンを描く。
スリーポイントを3連続で決め、相手が警戒してきたところを出し抜く。試合展開としてまず先にこっちだ。
そこに、三井に対する周囲の肯定、自らかけた呪縛からの解放を重ねる。
その結果、名シーンとなったのだ。
クライマックスに向けて、ゴリ・三井・木暮のエピソードも加速する。
三井はもちろん、他のキャラクターにも沢山の名シーンが訪れる。
もはや山王戦の全てが名場面とも言えるが、それは開始早々にこのシーンがあるからかもしれない。
それでは
カルボン酸太郎でした
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