漫画SLAMDUNKの全国大会編
湘北高校の初戦の相手は、大阪代表の豊玉高校だった。
結果は4点差で湘北の勝利。2回戦へと駒を進め、王者山王工業に挑む切符を手にした。
本記事では、対戦校の豊玉高校を掘り下げる。
私にとって、湘北VS豊玉はヒューマンドラマだ。
組織、人間関係の何たるかを、作中で最も考えさせられる高校が豊玉だった。
そんな豊玉というチーム、主要メンバーの南烈や岸本実理を語る上で欠かせないキーワードが
「北野監督」と「ラン&ガン」だ。
この2つの観点から彼らを取り巻く環境を整理する。
もしあなたが豊玉高校をただのガラの悪いチームと認識しているなら、それは誤解だと伝えたい。
彼らが何を思い、何を目指してバスケットをしていたのか。
丁寧に紐解いていく。
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豊玉と南と岸本と北野さん
南と岸本は少年時代、北野監督が指揮をとる豊玉高校のプレイスタイルに憧れた。
それが「ラン&ガン」だった。


スラムダンク完全版18巻


スラムダンク完全版18巻
ひたすら点を取る攻撃的なスタイル
高校の限られた時間じゃ全部は無理だ。だったら攻撃だけでもうまくなって、勝とうぜ。
そのほうが楽しいんだ。バスケットを好きになってくれる。
そんな北野さんの考え方や思想や、優しい人柄に憧れて、豊玉高校に入った。


スラムダンク完全版18巻
なのに北野さんがクビになった。
自分たちの好きなバスケを教えてくれた恩師をクビにされた。
そこから、彼らはとにかくラン&ガンにこだわった
ただ勝つのではなく、ラン&ガンで勝つ。
ラン&ガンが好きだから?
北野監督が好きだから?
最初はどちらもだっただろう。
だけどいつしか、その割合はだんだんと後者に偏っていったのだ…
北野さんへの愛と「ラン&ガン」の呪い
南と岸本は、大きな決意を胸に秘めていた。
「ラン&ガンで結果を残す」
この信念は彼らが気づかぬ内に、もはや呪縛と化していた。
それがわかるのが、試合中のタイムアウトのシーン


スラムダンク完全版19巻
「こんなとこで負けたら、、」
ここに続く言葉は
「北野さんの正しさを証明できひんやろ!」
ラン&ガンで全国ベスト4まで進んで、北野さんが間違っていなかったことを証明する。
その一心で頑張ってきた。


スラムダンク完全版19巻
金平が新監督として就任し、ラン&ガンを捨てると宣言した直後のシーン。
一緒にいるのはおそらく同学年の矢嶋と岩田だろう。
北野さんの正しさを証明し、ひいては豊玉でまた監督をやってもらう。
その思いは南と岸本だけでなく、豊玉メンバーの総意であったようだ。
最後まで蚊帳の外だった金平監督すら認める勝利への執念はそこから来ていた。


スラムダンク完全版19巻
相手選手を煽ったり、怪我をさせたり、狂気的なまでに勝利を求めた。
その執念はイコールで北野さんへの愛の大きさだった。
呪縛を解いたのは北野さん
試合の終盤、自身もチームも追い詰められた南の脳内には北野さんがいた。
南はずっと北野さんのことを考えていた。試合中も会場にいないか探していた。


スラムダンク完全版18巻
集中力が散漫な南は、流川に突っ込んで負傷してしまったが、怪我の治療をしてくれたのはなんと北野さんだった。
あっけなく久しぶりの再会を果たす。
そこでのやり取りで、南は北野さんが小学校でミニバスのコーチをしていること。ラン&ガンを教えていることを知る。


スラムダンク完全版19巻
そして北野さんが去り際に一言。
「とりあえず楽しそうにやっとるわ」


スラムダンク完全版19巻
ここまでで、誤解のないように一言だけ加える。
南と岸本が苦しんでいた呪いは、北野さんがかけたわけではない。
北野さんは、ただバスケットを好きになって欲しかった。
オフェンス8でディフェンス2の攻撃的スタイルの「ラン&ガン」は、楽しいだろう?
楽しかったらバスケをもっと好きになる、そんなシンプルな話だった。
北野さんに対する愛が、クビにされた怒りが大きかった。
自分たちの怒りがまるで怨念のように、自分たちを縛っていた。
それに気付けてなかった。
むしろこのやりとりで、南にかけられた呪縛は北野さんによって解かれたのだ。
ゲームそのものを楽しむことを、もうずっと忘れてた。それくらい北野さんのためにバスケをしてた。手段と目的が逆転していた。
楽しむことが大切。勝ったらもっと楽しい。
そして岸本にかかった呪いは南が解いた。


スラムダンク完全版19巻
残り2分になってようやくバスケを楽しむこと、バスケそのものに集中しだした。
今は北野さんのためだとか、目の前のプレー以外のことは頭にない。
そこから豊玉の反撃が始まる。ゴリの衝撃的なプレーも発生する。
しかしそれでも及ばず、湘北の勝利で試合は終わった。
スラムダンクで一番情の深いチームが豊玉
北野さんがクビになったことで生じた怨念が豊玉を、南を、岸本を、金平新監督を、苦しめた。
もちろん北野さんのせいではない。
最後の最後で、北野さんによって解放された。残りの2分は幸せな時間だっただろう。
豊玉メンバーが最初からバスケに100%集中できるのは、どんな環境だっただろうか?
一番は北野監督指揮のもと。でも、それは叶わない。
金平新監督がその意思を継承すればできた?
それも無理だ。北野さんの代わりとして来た以上、変化が求められていた。
金平もラン&ガンをやったら北野さんでよかったことになる。
どうすればよかったのか答えは誰にもわからないが、歯車が一つでもうまくかみ合えば豊玉には違った未来があったかもしれない。
ただ、これらのこじれが全て豊玉メンバーの情の深さに由来していることが、何とも言えない切なさがある。
最後に、豊玉メンバーに刺さった言葉
「バスケットは好きか?」


スラムダンク完全版19巻
くしくも晴子が花道に放った言葉と同じだ。
もしかしたら、井上雄彦先生が一貫して伝えたいメッセージなのかもしれない。
それでは
カルボン酸太郎でした
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