休日の朝、いつもより早く目が覚めた。
何も予定はないし、やるべきこともない。幸せな1日のはじまりだ。
こんな日は、少しおしゃれな事をして過ごしたい気分になる。
代官山蔦屋のスタバでコーヒーを買って、雑誌や音楽を漁りながらゆっくり過ごす。もしかしたら、新しい「好き」を見つけられるかもしれない。
そんな典型的な、おしゃれの代名詞ともいえる活動がしたい。
もはやおしゃれとは言えないかもしれないが、結局王道が一番なのだ。
窓を開けると太陽が輝いていて、昨日までの寒波が嘘のように快適な気候だった。
「これならバイクで行けそうだな。」
そう思った瞬間、心がさらに躍動する実感がした。
僕は最近かわいいバイクを買った。
オランダ産のバイク、TOMOS(トモス)だ。自転車としても使えるこのバイクは、モーター + ペダルから由来してモペットと呼ばれている。
ママタルトの檜原さんも愛用しており、このバイクを紹介しているブログで一目惚れしてしまい、思い切って購入した。
こんな見た目でも50km/hの速度が出るれっきとした原付バイクだ。
かわいいバイクで東京の街並みを走り、代官山蔦屋で穏やかなひと時を過ごす。
おしゃれにおしゃれを重ねられそうな気配に、僕の気分は明らかに高まっていた。
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ちょうどいい気温かと思ったが、いざバイクに乗ると寒かった。
「バイクに乗って走ると、風のせいで実際より寒い」
こんな事はあるあるを超えて当たり前の話なのに、朝の自分は愚かだった。
少しダメージを受けた状態で代官山蔦屋に着いた。駐輪場に止めようと思ったら、バイクには自転車と別の場所が設けられているようだった。
バイク用駐輪場に着いた僕は、愕然とした。
料金:15分 100円
もちろん有料なのは覚悟していたが、さすがに高すぎる。ありえない。
…ああそうか!利用者はもっと安くなるやつか。レシートを集めるやつだな。デパートとかそのシステムのとこ多いもんな。
深く息を吸って、落ち着いてから看板を確認した。
割引サービス
2000円以上使用 1時間無料
5000円以上使用 2時間無料
は?何もサービスになってないのだが?
dポイントクラブクーポンのバーミヤン本格焼餃子(6個) ¥239(税別) → ¥199(税別)くらい意味ないだろ。
ガストの山盛りポテトフライ¥299円(税別)→¥149円(税別)くらいしなきゃサービスとは言えない。
疑っているあなたのために、蔦屋書店の公式サイトをご覧いただきたい。
頭の中で、小さな夢が砕け散る音が聞こえた。
セコ過ぎる僕の思考回路
僕が代官山蔦屋でやりたかったのは
「コーヒーの香りが漂う空間で新しいカルチャーに触れながら、流れていく時間を楽しむこと」だ。
ポイントは、この活動に対して必要な費用は「コーヒー代」だけであることだ。
これこそが、蔦屋書店が人気な理由である。
コーヒーを飲みながら、売っている本を読むことが出来るのだ。
本気で一冊読むのも良いが、何冊も何種類もの本をかいつまんで読み、買って帰りたい本を見つける。そんな活動に魅かれて多くの人が集う。
しかし、ここに15分100円の駐輪代金が重くのしかかる。
あたかも、その空間で過ごす時間が15分100円であるかのような感覚になってしまう。
滞在時間が有料になった瞬間、興が削がれてしまう事は共感して頂けるだろうか?
感覚はレンタル彼女への嫌悪感が近いだろうか。
彼女との食事、デートに費用がかかるのは当たり前だが、そもそもデートすること自体にお金がかかる事は許し難い、みたいな。
ともかく、おしゃれなカフェに入場料があるなんて、僕の金銭感覚ではまだ許せない話だ。
ちなみに自身の金銭感覚に関しては壊れている自覚がある。
ラジオで話しているので、ぜひ聞いてみて欲しい。
どうやらまだ、代官山で過ごすには僕の格は追いついてないようだ。
僕はかねてより、銀座で部屋着みたいな格好でコンビニで買い物している人が「本物」説を唱えている。銀座の近くに住んでいる証明に他ならないからだ。
だから代官山蔦屋にバイクで行く、その移動手段すらも愛おしく思っていた。
でも、もう二度と代官山蔦屋には行かない。バイクでは。
本物になれなくたっていい。
僕はこれから、代官山蔦屋には、電車で行く。
カルボン酸太郎でした